サイバトロンとデストロンが共同戦線を結んで。

ユニクロンを斃して。

メガトロンが、消えて。

 

 

 

 

それでも、やる事はウンザリする程あった。

毎日毎日、仕事が尽きない。

機械生命体だって、疲れぐらい溜まる。

一日の仕事量を何とかこなして、自室の寝台に倒れ込む様にして眠る。

そんな風に、日々を繰り返す。

そして今日も、天空の騎士サマは蓄積された負荷を軽減すべく、寝台に横たわる。

 

 

 

余程負荷が溜まっていたのか、心地良いスリープはすぐに始まる。

意識はあるけれど、感覚は無い。

全てを預けて、ただのジェットファイアーとして休んでいる。

それがたまらなく心地良い。

何よりもスバラシイのは、

 

 

「よっ」

ひらひらと手を振れば、少し―――いやかなり嫌そうに、口をへの字に曲げた赤い機体がいる事だ。

歩み寄るジェットファイアーをきつく睨みつけてはいるものの、退く様な真似はしない。

それだけでジェットファイアーには、彼が照れているだけだと判る。

『貴様、また来たのか』

「お前に逢いたくてさ。やさしーだろ?俺」

小首を傾げて同調を得ようとするものの、相手は嫌そうに溜息をついただけだった。

『本来なら逢う筈が無い。ここは、』

「あー判ってる!判ってるさ!!けど言うなって!」

言い掛けた唇を塞いで、ついでに相手を抱き締める。

ジェットファイアーの暴挙に向こうは驚き抗おうとするが、抱擁を外すつもりは無かった。

肩に顎を乗せ、聴覚センサーの近くでぽつりと呟く。

 

「―――判ってんだよ、都合のいい夢だって事なんざ」

 

突っ張る腕が、止まった。

「毎晩お前に言われなくたって、俺だって理解してるんだぜ?スタースクリーム」

おまえは死んだ。

だから、今俺と話しているのは夢の中で俺が作り上げた仮想メモリーに過ぎない。

『・・・理解しているならば、いい加減』

「そりゃ無理な話だ」

皆まで言わせたくない。故に今度は掌ではなく唇で相手の口を塞いだ。

抱き締めてやることも、こうしてキスしてやる事も。現実では数える程しか出来なかった。

「もっとこうしてやりたかった。もっとキスして、えっちぃ事も・・・殴るなよ!!俺の仮想メモリーだろ!!?」

本音を言っただけなのに、容赦ない拳が振り下ろされた。

夢の中なのでまぁ痛くは無いが、ジェットファイアーに言わせれば、心が痛い。

『判った、こちらが望みだったか』

今度は本当に機嫌を損ねたらしく、赤い機体―――否、スタースクリームはすらりと片翼をブレードに変形させ引き抜いた。

「わ、ちょ、判った判った俺が悪かったよ!」

大きく構えられた白い刃に慌てて降参すれば、一先ず一刀両断に振り下ろされる危険は回避出来た。

『全く・・・くだらん事しか言えんのか貴様は。それでサイバトロン軍副司令とは笑わせる』

ブレードを仕舞い、スタースクリームが嘆息する。

その物言いに、ジェットファイアーはちぇ、と舌打ちした。

「スリープモードの時ぐらい、ただのジェットファイアーでいたいんだよ俺は」

『・・・ならばスリープ時ぐらい、こんな無駄な事にブレインサーキットを動かすんじゃない』

スタースクリームの言葉は、返事というよりは独り言に近かった。

怒るでも呆れるでもないその表情に、ジェットファイアーは内心自分の仮想システムの高性能さに舌を巻いていた。

確かに、あいつが生きていたならこんな顔をしただろう。

突き放す様に、こんな言い方をしただろう。

「無駄なわけねーだろ。無駄だったら、そもそもこんな仮想メモリーなんか作らない」

『お前のブレインが無駄だらけなんじゃないのか』

「違うさ。ここは、俺にとって必要だから作り上げたんだ」

 

スパークが残っていたなら、ボディを差し替えるなりマイクロンの力を借りるなり、奇跡に縋れたかもしれない。

けれどお前はもう、どこにもいないんだスタースクリーム。

だからここは、俺がその事実を受け入れる為に作ったシミュレーションの世界。

負荷軽減処理が終わったら、また起き出して、仲間の所へ行って、戦後の後始末に奔走しなきゃならない。

 

 

 

もう、夢の中でしかお前に逢えない。

 

 

 

だからせめて今ぐらい俺の自由にさせてくれ。

そう言ってキスすると、スタースクリームは感心出来ない、と機体色ばりに顔を赤くして視線を逸らした。

 

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ツイッター診断:副スタで3つの恋のお題≪夢でしか、お前に会えない≫

最終回後、かな・・・・妄想でもスタスクに殴られる副司令イェア!!!

2011.08.27