※ジェットロン幼少期捏造妄想です。
13.
スカイファイアーとの出会いは、スタースクリームにとって大きな出来事だった。
研究分野こそ違うものの、スカイファイアーの話は聞いていて面白かったし、彼の傍は他の連中に比べ居心地が良かった。
招かれた彼の研究室にはあらゆる惑星のデータや地質標本が転がっており、お世辞にも綺麗とは言い難かったが―――当人の白さに反したその猥雑さが、逆に好感が持てた。
時間を忘れてまで誰かと討論する事や、共同研究の話が出る事など今までは考えられなかった。
あるとすればそれは随分昔になってしまった――――メガトロンの傍で過ごした、地下基地での日々まで遡らねばならない。
だがスカイファイアーは、メガトロンとは違った。
彼はあくまでも『隣』に在る存在であり、メガトロンの様に憧憬を抱かせる存在では無かった。
それでもスタースクリームにとっては、貴重な友であった事は間違いない。
共に過ごす時間が増え、それが当たり前になっていく。
その間に、あの地下基地の事を思い出す時間は減っていた。
久々に思い出した時も、スカイファイアーの一言がきっかけだった。
「君は誰か保護者がいたのかい?」
後片付けをしていたスカイファイアーが、小首を傾げこちらを見ていた。
パートナーとして組んで随分立つが、彼がそんな事を聞いてきたのは初めてだった。
否、そもそもスカイファイアーは聞き上手で、あまりプライベートな質問を振ってくるタイプではなかったのだ。
聊か後ろめたいものを持つスタースクリームにとって、バックボーンを聞かれない事は都合が良かったのだが――――
今更そんな事を聞かれ、一瞬返事に戸惑ってしまった。
「・・・どういう、意味だ?」
「いや、別に大した理由ではないよ。ただ君は危機管理力はあると思うのに、時折その…注意力が散漫になるから」
だから、その部分をサポートしてくれる人がいたんじゃないかと思って。
そう笑うスカイファイアーに、スタースクリームは久々に基地の事を思い出した。
『この武器は反動が大きい、お前にはまだ扱えん』
『こんなビームガン如き、何だってんです!見ててください・・・・・・・ッツ!!!』
『っ言ったであろう愚か者め!!儂が支えなんだら、お前は今頃向こうの壁と激突しておったのだぞ!!』
「―――サポート、ねぇ・・・・」
確かに、一つの事に集中すると周りが見えなくなるのは自分の欠点だ。
だが欠点を自覚していても、それが直せる者と直せない者がいるのだ。
スタースクリームは、後者だった。
「君はあまり昔話をするのが好きじゃないみたいだから、黙っていたんだけど」
「嫌いってわけじゃねぇよ」
言えるものなら、言っても良かった。
ただ自分はメガトロンの期待を受けて地上に、この研究所に送られたのだ。
そしてメガトロンが率いるあの地下組織は、決して善良な類ではない事も理解していた。
スカイワープ辺りなら、口止めされた事も忘れてぺろりと話してしまっただろう。
けれどスタースクリームは、スカイワープではないのだ。
「お前の推測は間違ってない・・・ただちょっと複雑で話したくないだけだ」
「そう」
「注意力散漫な俺様が心配か?」
「まぁね」
パートナーだから。
そう苦笑するスカイファイアーに、スタースクリームは振り返り、笑ってやった。
「ならお前がずっとサポートしろ」
パートナーなんだろ。
そう言った時のスカイファイアーの表情は、永久保存しておけば良かったと思った。
サウンドウェーブからの連絡は途絶えたままだったし、日々は単調だが退屈では無かった。
このまま自分の横にいるのは、メガトロンではなく―――スカイファイアーなのではないかと。
そう、思い始めていた。
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平和。