※ジェットロン幼少期捏造妄想です。

 

 

4.

 

 

先に捕まっていた二機とは、案外早くに互いの安否が確認出来た。

―――見た処、向こうに大きな破損箇所は無かった。むしろスタースクリームの方が酷いぐらいだ。

聞けば二機で空中散歩をしていた所を呆気なく捕まったのだという。

電子手錠を嵌められた状態で、三機は顔を寄せ囁き合った。

「どうなると思う、俺たち」

ぽつりと、サンダークラッカーが呟く。

「良く判らねぇけど・・・あいつ、俺達が珍しいって言ってたな」

「あの青いヤツに言われたのか」

「ああ」

飛行型のトランスフォーマーはまだ珍しい。それは事実だ。

一度『大人』に騙され売り飛ばされそうになったスタースクリーム達自身が、一番良く知っている。

「またどっかに売られんのかな」

「けっ・・・・そうなる前にここを破壊して逃げてやる」

そう、スカイワープが意気込んだ。

 

 

「心構えは買ってやろう」

「「「!!」」」

 

どうやら、自分達の企みは筒抜けだったらしい。

振り返ったそこには、見知らぬ銀色の機体が立っていた。やや後ろに下がった位置に、あの青い機体もいる。

「・・・っ」

一斉に警戒し身を固くする三機に、銀色の機体はどこか愉快そうに笑っている。

「サウンドウェーブ、これが昨日の襲撃者だと言うのか」

「証言、多数。物的証拠もある」

青い手が、銀色の主君にオイル缶を差し出した。

それは確かに、昨日スタースクリーム達が盗んだものだった。

「こんな幼年体にしてやられたか。お主もまだまだだな」

「・・・・」

サウンドウェーブと呼ばれた青い機体は、黙して答えなかった。

その反応も半ば予想していたのだろう、銀色はくつくつと笑っている。

「しかし、飛行型が三機もこんな掃き溜めにいるとはな」

「機体スキャンした結果、製造番号が無い。試作体だったと思われる」

「ほう」

「特殊能力、指揮演算能力・・・・各機体のスペックに斑が多い。メガトロン様、どうする」

メガトロン。それがこの銀色の機体の名称らしい。

足元から翼の先まで、じっくり値踏みされる視線を受けながら、スタースクリームは“メガトロン”と呼ばれた機体を睨みつけた。

態度が生意気だと蹴り飛ばされた事は過去にも何度かある。それでもそんな事をした『大人』は、後で充分な程の仕返しをしてやったのだ。

睨む事を止めないスタースクリームに、銀色の機体は僅かに手を上げた。

ヘッドパーツごと鷲掴みにされると、スタースクリームの機体は軽々と宙に浮いた。

「ひ・・・!」

大きな掌が、スタースクリームには恐ろしかった。

自分の後ろで縮こまっている二機を恨めしく思うと同時に、羨ましくも思った。

この手は容易く自分達を破壊出来るだろう。そう思うと、恐怖が全身を支配した。

あの青い機体と対峙した時とは比べ物にならない程圧倒的な、威圧感。

それらは先程まで企んでいた逃亡の手立てや、嘲笑の文句を頭からすっかりと打ち消していた。

かちかちと震えるスタースクリームから視線を逸らさぬまま、メガトロンが薄く笑った。

同時にヘッドパーツを掴む指に力が込められ、軋んだ音がした。

「ッいやだ!しにたくない、ころさ、ないで・・・!」

 

 

スタースクリーム達にとって、『大人』は偉そうにしている癖に間抜けで、のろまで、侮蔑すべき存在だった。

だが目の前のこの機体は違う。

これは今までのそんな大人達とは比べ物にならない存在なのだ。

 

 

怯えるスタースクリームが涙を零し始めると、メガトロンは漸く手を離した。

「翼に感謝するのだな」

「ッ!!」

無様に床へ落ちたスタースクリームに、成り行きを見守っていた二機が慌てて近寄る。

メガトロンの迫力は、真っ向から見据えられずにいた二機にも充分な恐怖を与えていた様だった。

あのスカイワープでさえも、表情を消して震えている。

「サウンドウェーブ」

「ここに」

今まで黙していた青い機体が、静かに控えた。

忠僕の態度を確認し、次にメガトロンは床の三機を顎で示した。

「暫く様子を見てみたい。レーザーウェーブの所に・・・いや、お前がしてやられた三機だ。お前が監視につけ」

「・・・・了解」

ごく簡素に命令の受諾を告げると、青い機体は黙って床の三機を拾い上げた。

 

 

 

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「子スタ、初めて大人を怖がる」の巻。