「余計な真似してんじゃねぇ!」

ぱしん、と乾いた音。
差し伸べた掌に、ひりひりと痛みを感じた。

 

 



手を貸そうと、思っただけだよ」
「『女』だからか?」
軽く埃を払い立ち上がった、スカイファイアーを睨み上げる眼は爛々と赤い。
まだこの研究所に女性の姿は少ない。その中でも赤い眼を持つ人物は、確か一人だけだった筈だ。
とても優秀だと、所長から良く話を聞いている。
少々プライドが高いのが玉にキズだとか何とか。
「どうせテメェも『女がでしゃばった真似するな』とか言いてぇんだろ。くだらねぇ研究レポートしか提出出来ない癖に、反吐が出るぜ」
その言葉に、彼女がどんな境遇にいるのかを知る。
そうだ、彼女はとても優秀だ。
誰よりも優れた研究成果を出すし、誰もが一目置いている。
だからそこには、やっかみも当然存在する。
今だって、数人に取り囲まれていたのだ。スカイファイアーが通り掛からなかったら何が起きていたか―――想像したくもない。
「あんな連中、俺様一人でどうとでも出来たんだよ。おせっかいめ」
「それは・・・確かに、よく言われるよ」
よく与えられるフレーズに苦笑すると、赤い眼が丸く見開かれる。
どうやら驚いているらしく、見上げてくる濃い赤は美しいのに表情が幼いせいで随分くすぐったい気持ちになった。
ふん」
やがて我に返った彼女は、もう一度スカイファイアーを睨むとこちらに背を向けてしまった。

「あ、スタースクリーム」

「貸しの事だけど」
「あ?!っいつ、俺様がテメェに
勢い良く振り返ったところで、言葉尻がすぼむ。
今し方の事だと思い当たったのだろう、悔しそうに唇を噛んでいるのが判った。
「私の名前はスカイファイアーと言うんだ」
……で?」
「だから、私の名前を覚えて欲しい」

「それで貸しは無しだ」

悪い話じゃないだろう?
微笑むスカイファイアーに、スタースクリームはぽかんと口を開けていた。
なんだこいつ。
名前って普通なら今扱っている研究データを寄越せとか、そんな条件持ってくるだろうに。
……
馬鹿か?

フリーズしたままのスタースクリームに、スカイファイアーは宜しくねと笑って廊下を去っていく。
その背中を長いこと見送ってから、スタースクリームはぼそりと呟いた。



なんだあいつ」



今までに出会った何物とも似つかない、奇妙なデカブツ。
そのデカブツと同じチームを組む羽目になるのは、もう暫く先の事であった。


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おわり*********
スカファ的には紳士として接したつもり。紳士は貸し借り口にしないよ!

男尊女卑の激しいスタは、自分が女だったら逆に凄く男を見下してそうかな、と・・・

 

 

書き殴りだけど、かろさんへ!()いつも萌えツイートありがとうございます!

11.02.01