アストロトレインと三つ子の話。
あいつらの話?
面白い話なんか特にねーぞ。
初めて会った時・・・は、覚えてねーわ。
なんかもう当然の様にいたっつーか。
お?多分あいつらがもっとちんちくりんだった時だよ。マジで鼻たれてたぐらいの。
よーちえん?あー・・・まぁ多分そんぐらいだろ。
俺はまぁ、ランドセル背負ってた時だな。
あの頃はまだあいつらも可愛かったと思うぜ?あすとろ兄ちゃん、って後ろパタパタついてきててな。
けどあいつらそん時から三匹一緒。いつでもそうな。
まぁスカイワープが馬鹿なのも、サンダークラッカーがボケッとしてんのも昔からだ。
スタースクリーム?・・・今よりもちっと可愛げがあったぜ。
教えてやろうか、俺のとっておき。
あいつそれぐらいちんちくりんの頃、俺の嫁さんになるって宣言したんだぜ。
『すたすく、アストロにぃのおよめさんになる』って。
その後それ聞いた二匹が拗ねて拗ねてスゲー大変だったんだけどな。
だから多分あいつの初恋は俺なワケだ。
この話すっとスゲー馬鹿にした目で見てくるけどな。
あ?いや別に。アレ照れてるだけだしよ。判ってんだよ俺。長い付き合いだから。
かわいーだろ。
ちなみにこの話にゃ続きがあってよ。
俺がこの間話に出すまで、本人はすっかり忘れてたらしいんだわ。
思い出したらしくてスゲー顔真っ赤にして殴られた。いや話逸れたな。
まぁとにかくスタースクリームの奴は忘れてたんだが、二匹はしっかり覚えてたらしくて。
――――あれ以来俺はやたらと辛辣な扱い受けてるワケ。
理不尽だろ?
けどなぁ、幼馴染のオニーチャンなんてそんなモンだろ。
そう語った後、妙にタイミング良く携帯電話が鳴った。
煙草に火をつけていたアストロトレインがディスプレイを確認すると、温く笑う。
「噂をすりゃ三匹だ」
ステレオモードにして電話に出れば、成る程話題にしていた三つ子の一人が喋っていた。
『アストロトレイン、週末車出せ』
「あ?何だ急に」
『海、行く事になったから』
「・・・お前ら、まず俺の予定を確認してからお伺い立てろよ。何で命令形なんだよ」
声がやや高いから、恐らく相手はスタースクリームだろう。
確かに予定など無いが、頼み事をする立場の癖に高圧的に出られると、こちらも渋りたくなるというものだ。
そんなアストロトレインに対し、電話の向こうの三つ子はさも馬鹿にした様に鼻で笑っていた。
『予定ってどうせ何もねーだろ童貞』
『彼女もいない癖に何言ってんだ童貞』
『大方今もブリッツと飲んでるとかだろ童貞』
「・・・・童貞じゃ無ぇって何度言ったら判るんだよガキ共」
現在彼女募集中である事も、侘しく男二人で飲んでいる事も的中しているが。
怒る気力も起きないのは、既にそんな遣り取りに慣れた腐れ縁だからか。
『ガソリン代半分ぐらいは出してやるよ。それでいいだろ?』
こちらが断るとは微塵にも思っていない辺りが、可愛いものだ。
持ち上げた発泡酒の缶は既に空になっていた。
握りつぶして隅のゴミ箱に放ると、外れて床に転がる。
「お前らそう言って出した事あんのかよ・・・んじゃスタースクリーム」
『あ?』
「ガソリン代いらねーから胸揉ませろ」
『死ね童貞』
ぶつりと電話を切られた。
今頃電話の向こうでは怒り狂うスタースクリームとスカイワープがいて、それをサンダークラッカーが宥めている頃だろう。
簡単に予想出来る光景にくつくつと笑っていると、向かいでブリッツがあたりめを齧っていた。
「んでどうすんだ」
「・・・ナンパでもしに行くか、水着ギャル」
来るだろ?と聞けば、馬鹿代表の友人はあっさりと釣れた。
再び鳴り出した携帯電話は、メロディーからして今度はメールだ。
大方三つ子のうちの誰かが、こちらのセクハラを罵倒する内容を送って来たのだろう。
確認してみると、やはり想定した通りだった。
―――それにしてもサンダークラッカーの奴、コピペだろうが『死ね童貞』だけで文字数いっぱい使うのはいただけない。
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アストロおにーちゃんと三つ子。
一度「童貞はお前らだろうが」って言い返そうかと思ったけど、「自分達で卒業した」とかディープな返し方されたら困るなと思って黙ったという。
アストロおにーちゃんから見ても三つ子は怪しい関係です。ちなみに兄ちゃんは大学生ぐらい。
2011.09.05