13.

 

 

 

部屋のドアを開けると、そこには真っ白い大きな足があった。

ミニボットであるバンブルにとって、殆どの仲間達は見上げねばならない程のサイズ比があるが、その中でもこのパーツの持ち主は飛び抜けて大きい。

下がって距離を調節しなければ、顔が見えない程大きいのだ。

慣れた様に一歩下がり訪問者を見上げると、そこでバンブルはアイセンサーを瞬かせた。

 

「スカイファイアー?」

「・・・こんばんは」

 

別に訪問者がスカイファイアーだった事とか、遅い時間だという事に驚いたのではない。

黄色いミニボットの驚きは、見上げた仲間の―――顔の表面に擦れた痕があったからだ。

「こんな時間にどうかなと思ったけれど、これを返しに来たんだ」

差し出されたものは、スカイファイアーの手には小さくバンブルの手には大きい。

昼間貸した、プラネタリウムだ。

「あ、うん、わざわざありがと」

慌てて受け取るものの、視線はやはり大きな仲間の顔にいってしまう。

「・・・スカイファイアー、泣いたの?」

穏やかな笑みが、少し気まずそうな色に変わった。

「・・・昔を思い出したら、つい―――ね」

その言葉にどれだけの思いが含まれているのか、バンブルには判ってやれなかった。

戦争が始まって随分経つが、ずっと地球で眠っていたスカイファイアーにとっては何もかも急な話だっただろう。

「・・・んと、スカイファイアーが望むなら、おいらもうちょっと預けてて構わないよ?」

だからそう提案したのだが、スカイファイアーは優しくバンブルの頭を撫でるだけだった。

「大丈夫。星は、ちゃんと見えたから」

「・・・そう。なら良かった。おいら、役に立てたんだね」

真っ白な輸送機は、笑顔で頷いてくれた。

 

踵を返し部屋へ戻っていくスカイファイアーの背中を見送りながら、そうっとバンブルは自室のドアを閉めた。

リペアが必要な程泣いていたのだろうあの白い仲間を、自分はどれだけ励ます事が出来たのだろう。

腕に抱いたプラネタリウムは、今は静かに沈黙したままだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

部屋に帰ったスカイファイアーは、違和感に足を止めた。

プラネタリウムを返しに行った時、確か部屋の照明はつけてきた筈だ。

強制終了したままのスタースクリームが、いつ目覚めるか判らないから―――目覚めた時に暗闇では、状態によっては酷く混乱させてしまうだろうから。

そう思って照明のスイッチは入れたままにしたと思うのだが、開いたドアの向こうは真っ暗だった。

つけたつもりで出てきてしまったのだろうか。メモリーを態々確認するつもりは無いが、少し気になる。

「スタースクリーム?」

一歩、足を踏み入れた。

 

 

その瞬間、衝撃が全身を駆け巡った。

 

 

「!!!!?」

体内回路が次々と遮断され、受け身を取る事も出来ず床に倒れる。

あまり良い思い出ではないが、この痺れる様な感覚には覚えがあった。

氷塊の中から目覚めたその日、旧友の笑顔を見、そして拒絶を裏切りと罵られ浴びせられた、あの光線。

「す、たー・・・・・?」

スイッチが入れられ部屋に灯りが戻ると、そこにはスカイファイアーに銃口を向けたままのスタースクリームの姿があった。

 

 

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